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September 04, 2011

大規模法律事務所の悲鳴が聞こえる

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 日弁連の発行している弁護士白書2010年版によると、日本の大手法律事務所が抱える弁護士数は以下のとおりである。固有名詞はあえて書きません。

 1位 471人
 2位 338人
 3位 299人
 4位 290人
 5位 224人
 6位 118人
 7位 110人
 9位  73人
 10位 69人

 私自身、かつて、この中に名を連ねる事務所に所属していたことがある。
 この10数年の間に、多くの事務所において離合集散があったので、正確にいえば、それらの離合集散が起こる前のある事務所のことであるが。

 こうした大手の法律事務所は、司法試験合格直後から、若い合格者にアプローチをし、高度の専門性、一等地に立つ個室が完備された美しいオフィス、海外留学などを惹句にして、毎年、数十人単位の採用を続けてきた。

 私が所属しているときから、そういう指向性は垣間見えていた。

 長所は、環境が変わると、一気に短所に変わる。

 誰もが専門家になってしまえば、トータルに全体を見ることができなくなってしまう。
 同じように、大規模な案件が扱えるということは、それらをパーツに分解して処理せざるをえなくなり、若い弁護士が、事件の入り口から出口まで、トータルに関与できる機会を失わせる。
 意思決定に関与する人物が多ければ多いほど、意思決定は遅くなるし、保守的になる。
 規模が大きければ、実行スピードは、遅くなり、コストもかかる。
 個室が完備されていれば、インフォーマルなコミュニケーションが遮断されてしまい、個人の経験の蓄積を交換しずらくなる。
 マネジメントは肥大化し、一部の弁護士は、マネジメントに専念せざるをえなくなるが、えてして、弁護士はマネジメントが苦手だ。

 そんなことを考えて、私は、自分の属する組織のバランスシートを重くしないように心がけてきた。
 
 これらの大手事務所の弁護士の給与は高いので(新人でも1000万円以上がふつう)、人件費だけでも、大変だろう。新人が100人いたら、それだけでも8333万円。当然、シニアの弁護士の報酬はもっと高いはずだから、毎月数億円を調達しなければならないはずである。オフィスの賃貸料も億単位でかかっている可能性もある。

 こうした事務所は、多くの場合、大手企業をその顧客層としているが、長引く不況で、法務予算もどんどん削られる傾向にあるので、本当に大変だと思う。

 給与カットが行われはじめたという話も聞くし、所属弁護士が公益的活動義務としておこなう国選弁護事件の報酬もすべて事務所に入れるようにいわれている、という話もきく。

 なによりも問題は、有能でやる気のある弁護士たちが、仕事もないまま、オフィスで時間をつぶしていなければならないような状況があることである。乾いた砂が水を吸うように知識と経験を吸収できる時期に、生の事件に多く触れることができないのは、本当に気の毒であるし、中長期的には、法曹の質の劣化をまねくだろう。

 だからといって、やめても、簡単に行くところはない。
 新聞報道等にあるとおり、大手以外の法律事務所も、増え続ける弁護士を受け容れかねて、就職が決まらない司法修習生が40%もいるともいう。そんな市場に、飛び出すのはたいへんだ。

 以前、教官をしていた関係で、若い人の相談を受ける機会も多いのだが、本当に心が痛む。

 独り身なら中国へでも留学したらどうかなあ。
 もうアメリカやイギリスを向いていても仕方がないのではないか。
 
 いまなら円高だから、1$=130円時代の半額で留学できるんだから。

 と、すでに職業人生の後半戦に入った私は、夢想したりするが、どうなんだろう。

 全体状況は悪くても、個別にそれを突破する道はあると思う。

 健闘を祈る。

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Posted by: free music downloads | February 27, 2015 at 05:28 AM

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