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November 19, 2013

髙橋正部長の思い出

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 「喪中のため新年のご挨拶を失礼させて頂きます」
 そんなはがきが、すこしづつ届きはじめた。

 今日、受け取ったのは、僕が、司法修習生だったとき、民事裁判の実務修習でご指導を受けた髙橋正部長の奥様からのはがきだった。

 本年10月27日にお亡くなりになったとのこと。
 音楽、囲碁のよいお仲間に恵まれ、幸せな晩年であられたとのこと。

 僕が、司法試験に合格した頃は、合格後2年間の修習が義務づけられていた(いまは1年)。
 法学部を出ても、司法試験に受かっても、裁判所に提出する訴状ひとつ書けるわけではない。
 司法修習は、学問としての法律学と実務の架け橋だ。

 司法研修所で4ヶ月間にわたり実務の基礎を学び、その後は、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護と、現場の実務を経験して回る。裁判官になる者も、検察官になる者も、弁護士になる者も、みなが同じように、すべての研修をする。

 僕は東京地裁の民事6部に配属された。
 各部にはベテラン、中堅、新人の3名の裁判官が配属されている。
 部長の髙橋さんは、ハンサムで温厚でシャイで繊細な方だった。
 
 判決の言い渡しの前には、本当にこの判断でよいのか、思い詰めて胸が苦しくなるのだとおっしゃって、口数が少なくなっておられた。愛妻弁当を持参されていたが、午後1番で判決がある場合には、お昼にそれを食べることを控えておられることさえあった。

 僕に与えられた事件で、考えに考え迷いに迷って「請求棄却」の判決を書いて提出したことがあった。
 高橋部長は、冒頭を読んで「おお、「棄却」で書いてきたか。」とおっしゃり、それから、長い時間をかけて、じっくりと読んでくださった。そして「いままで、請求認容で考えていたんだ。けど、こういう考えもあるな。よく考えてみるよ。」と、いってくださった。
 
 実際の判決では、部長はそれまでのご自身のお考えを撤回して、僕の案を採用して請求棄却の判決を下された。

 言い渡しの前、笑顔で
「近藤君の起案をみて、考えを変えたよ。事実が「ある」っていことも大事だけど、長い間「あるべき事実がない」っていうのも重要だな。」とおっしゃった。30年も先輩なのに、一介の司法修習生の意見を、あたかも同輩のそれのように扱っていただいたことに、僕は、部長の懐の深さと司法府の良心を感じた。

 音楽を、こよなく愛し、広い官舎にグランドピアノを置いておられた。
 グレン・グールドがお好きだとおっしゃっていた。
 お正月に、部の書記官、事務官、そして司法修習生が招かれた。
 僕もギターを持参するようにいわれ、他の人も交えて一緒に演奏した。

 「近藤君と演奏すると、気持ちが高まってくるな。
  ギター弾いているんだけど、それをしながら指揮をしてるんだな。」といってくださった。
 僕たちは、奥様の手料理を堪能し、飲み、かつ、演奏し、とても楽しいお正月の1日を過ごした。

 民事裁判修習が終わったその日、かけてくださったことば。

 「近藤君は、弁護士志望だけど、裁判官になることも考えてくれよ。
  裁判官を志望してもけっして恥ずかしくない成績をつけておいたよ。」

 高橋部長の下で過ごして、自分を磨いた4ヶ月間。
 かけていただいたことば。
 
 思い返して感謝に堪えない。

 本当にありがとうございました。
 心からご冥福をお祈りします。

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November 10, 2013

あんずばあば101歳にして逝く

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 妻の母方の祖母「あんずばあば」こと内田澄江さんが、11月6日13時32分に天寿を全うされた。
 明治の終わりに生まれ、あんずの里・信州戸倉上山田に嫁ぎ、大正、昭和、平成と生き抜いて満101歳。三女一男を育て、妻の母は長女で、妻は初孫。

 愛される性格で、孫・ひ孫たちは、おばあちゃんの顔がみたいがため戸倉に集まった。
 写真はおよそ20年前、我が家の娘が幼稚園の青さん(年長組)の時のもの。

 この時と比べてもあんずばあばは、若々しいままで、通夜・葬儀で見たお顔は、とても100歳を超えているようには見えなかった。昼食を取って、横になってしばらくして呼吸が少しおかしくなり、お世話になっている施設の方が見守ってくださるなか、穏やかに息を引き取られたとのこと。

 金曜日の夕刻から土曜日の夕刻まで親類・縁者は、何度も食事を共にし、杯を交わしつつ、あんずばあばの思い出話に花を咲かせた。

 法名 百庭庵錦譽澄泉大姉

 長い間ありがとうございました。

付記 通夜・葬儀を担当された「信州さがみ典礼」の皆さんのすばらしい仕事ぶりには感銘を受けた。記して感謝の気持ちを表します。

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