2012年6月 3日 (日)

安愚楽牧場 破産管財人による説明会(5月30日)

 安愚楽牧場の破産管財人による説明会に行って来ました。

 配布された資料はこちら
 http://www.agura-bokujo.co.jp/g-navi/news/120531.pdf

 全国安愚楽牧場被害対策弁護団もアップしていますね。こちら
 http://agurahigai.a.la9.jp/syukaisiryou20120530.pdf

 安愚楽のHPも弁護団も、この資料をアップしてはいても、その読み方は説明していないので、ポイントだけ解説します(それにしても安愚楽のHP、いまだに宣伝のバナーを残しているのはひどいですね。弁護団のHPも代表のブログも被害者の皆さんが真に知りたいことについては書いていない。資金は潤沢なんでしょうから、資料をアップするだけでなくて、破産管財人と交渉してムービーでも撮影してアップし、ポイント解説すればいいと思いますが、余計なお世話ですね)。

 なお、この記事は、私のご依頼者のTさんご夫妻のご厚意のもとに、同じような立場にあられる全国の被害者の方々のために書くものです。個別のご質問にはお答えいたしかねます。同じようなご質問があれば、ブログでまとめてご回答することはあるかもしれません。また、集客を目的とするものでもないことを予め申し上げておきます。

 それでは説明です。千円以下の数字はまるめます。

1 現在の安愚楽の資産(資料の最後の最後 8頁の表の一番下を見て下さい)
  23億4500万円

2 安愚楽の負債
  税金  9億3200万円(8億8500万円支払い済み)
  給料等 4億4700万円(支払い済み)
  その他 3億5200万円(支払い済み)
  優先的破産債権 労働債権 1億4200万円
  オーナー債権者 4191億5749万円
  その他債権者    54億5000万円

3 ここから読み取れること
  現時点で配当をすると仮定すると原資は23億4500万円
  ここからまず破産管財人報酬が引かれます。いくらかはわかりません。
  次に優先権のある未払いの税金と労働債権を支払います。
  残った金額が一般債権者への配当にまわります。

  破産管財人報酬は脇におくと、ざっくり22億円が配当の「元手」です。

  これにをオーナーとその他の合計で約4246億円の債権者で分かち合います。

  22億円÷4246億円=0.00518=0.5% ⇒予想配当率

  これが現時点での予想配当率です。
  1000万円投資していても5万円しか返ってこないということです。

  これは弁護団に入っていても、いなくても同じです。

2 今後、安愚楽の資産が増える可能性はあるのか?
  少しはあります。
  資料の4頁「4 破産手続き開始決定後の主な管財業務について」を見て下さい。
  ここの④〜⑤あたりがそれです。
 
  その具体的内容については、私が説明会で質問しました。
  回答は以下のとおりです。

  ④の広告代理店に対する広告費の返還請求。
  管財人は、電通をはじめとする安愚楽の広告代理店が、違法不当な広告に加担していたのだから、少しは返せ、という交渉をしているそうです。広告費は総計で50億円以上払っていたそうです。
  しかし、法的な返還義務が認められるかどうかについては、強気の説明はありませんでした。
  会場のみなさんも「ここは無理」と受け止める発言が相次ぎました。

  ⑤の東京電力に対する損害賠償請求
  福島等の牛や牧場が放射能汚染されたことに基づく損害賠償です。
  10億円単位で交渉中とのことでしたが、最終的な妥結額も時期も未定のようです。

  そのほか、考えられるとすれば役員や関連会社への責任追及ですね。
  これについても、配当率を大きく動かすほどには無理でしょう。
  資料の5頁、6頁の未収入金、貸付金などを見て下さい。
  関連会社や役員に対する債権が記載されていますが、4246億円の負債に比べたら、微々たるものです。また、役員に対する損害賠償請求権は計上されていません。破産管財人としては、損害賠償請求までは無理、あるいは、すでに役員も破産手続きに入っているから回収不能と考えているのかもしれません。
  
  隠し資産はないのか、海外流出はないのか、という質問もありましたが、管財人は「あまりそういう感触は得ていない」と述べていました。

 以上の次第で、はっきり申し上げれば、今後、安愚楽の財産が配当率を向上させるほどに、大きく増えるということは期待できない、ということです。

3 その他
 申立代理人やそのまわりの者たちが、多額のフィーを取ったのでは、という質問に対しては、申立代理人の着手金は3000万円だが、行った業務に対して不当に高額であるとまではいえないと考えているという説明がありました。
 コンサルタント十数人に対し3億円というフィーが支払われている事実もあったそうです。
 彼らが経理・財務データを握っていて、管財人団としては苦労したが、今後、返還請求をすすめる可能性もある(すいません、ここはっきり把握できませんでしので、その留保付きです)。

 いずれにせよ、ここも4000億円を超える債権額の前には小さな話になってしまいます。

4 二次被害にご注意を!
  安愚楽がらみで詐欺が横行しているのでご注意をとのことでした。
  手口は、たとえば300万円投資した人に「その債権を100万円で買い取りましょう」という。
  そして「せっかくですから、その100万円に追加の100万円を出してくれれば、併せて200万円となるので、それを有利な投資に回すことができる。このチャンスをお見逃しなく。安愚楽被害を挽回できますよ!」といって100万円をだまし取る、というようなものだそうです。
  
 本当に、窮地にある人の立場につけこんでお金儲けをしようとする悪党はつきないんですね。

 以上、ご参考になれば幸いです。

  
  
  

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2011年9月24日 (土)

法曹に必要な能力のリスト

 愛読しているブログ、ちきりんの日記、に「未完の能力リスト」というエントリーがありました。

 とてもためになるので、ぜひご覧ください。

 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110922

 さて、ここに挙げられた能力については、人それぞれですが、法曹全般を見渡すと、ある傾向が見られますので、そのことについてコメントします。

<理解系能力>

・理解力(概念や関係性の理解力)
・読解力(書き手の込めた行間を読み取る能力)
・数的処理能力
・思考体力

 これは、司法試験に合格するためには必要ですよね。
 まあ、数的処理能力は必要ないかも。
 行間を読む能力も、よいテキストを選べば必要ないか。
 思考体力は、絶対必要ですね。
 予備校のマニュアル本ばかり読んでいると思考体力はつかないから、注意。


<記憶系能力>
・短期記憶容量(例:ちらっと見ただけの数字の羅列や英単語を、すぐにそらんじられる)
・長期記憶容量(例:読んだ本の内容、電話番号や人の名前、タレントの名前やプロフィールを大量に記憶してる)
・超長期記憶容量(例:子供の頃の記憶や、何年も前の食事の内容を鮮明に再現できる)

 これは、あんまり必要ないですね。
 一般の方々が「六法、全部暗記しているんですか」とかおっしゃいますが、そんなことは必要ない。
 それより「なぜ、その条文が存在しているのか、制度の趣旨は何なのか」ということを理解し、そこから、論理を展開できることが必要。

<メタ認知系能力>
・洞察力(深化系の能力。想像力、パターン認識力を含む)
・構築力(ストーリー構築力、仮説構築力など、洞察力と反対方向の能力。たぶん先見性はここに含まれる?)
・俯瞰力(上下ではなく、広範囲を見ることができる能力)

 これは、受験時代はあんまり必要ないですね。
 でも、実務に就いたら、できる弁護士と凡庸な弁護士を分ける大きなメルクマールとなる。
 だから、大学1年の時から、ずっと司法試験のことだけ考えているような生活は送らない方がいいですね。

<表現系能力>
・言語を使いこなす能力(語彙の豊富さと適切な語彙の選択力)
・口頭コミュニケーション力
・文章力
・プレゼンテーション能力(言葉だけではなく、スタイル全体)

 このあたりは、一般的にいって、弁護士の能力は低いです。
 法曹村の内々のジャーゴンで話をすることはできても、それを、外部の人たちに理解できるように変換して、しゃべり、書き、発表する能力は、一般的にいって低い。
 そして、そのことが自覚できていない人は多い。

<決断系能力>
・判断力(どうすべきか“わかる”)
・決断力(“決められる”)
・行動力
・大胆さ(思い切りの良さ)

 これも受験ではいらないけど、弁護士になったらいりますね。
 おおいに必要。

<対人系能力>
・リーダーシップ
・交渉力
・指導力(部下の育成力)

 これも、案件の関係者をまとめて、問題解決に向けて行動させるためには、必ず必要。
 また、事務所をまとめていくためにも必要。


<人間力>
・個性(個人インパクト、一度会ったら忘れない強い印象)
・好感力(常にニコニコしてる。人当たりがいい。誰からも好かれる)
・善性(正義感、公正さ、誠実さ)

 個性はあるけど、好感力は乏しい人が多いかな。
 善性。。。あってほしいけど。

<意欲系能力>
・自主性
・志(公共マインド、目線の高さ、信念=ぶれなさ)
・挑戦的な目標設定能力(高いところにゴールを設定する力、満足しない力)
・冒険心(リスクをとる能力)

 これはどうなんですかね、
 正義を掲げた詐欺師にならないように気をつけたいものですね。

<根性系能力>
・精神的な根気(飽きずに続ける力)
・体力的な継続力、エネルギーレベル
・意思力(易きに流れない自己管理能力)

 俺はぜんぜんない。
 あった方がいいに決まっている。


<創造系能力>
・新奇性(ユニークなことを思いつく力、アイデア力)
・発想力(枠を設定しない力)
・好奇心、探求心

 あればいいけど、なくても、地道な法曹としてはやっていけそうですね。


<実施系能力>
・慎重さ
・正確さ
・器用さ

 慎重と正確さは、ある人は多いかな。それだけだと魅力に乏しいけど。


<感情系能力>
・自己の感情のコントロール力
・相手の感情の読み取り力、敏感さ
・共感力

 要りますね。
 必須。


<精神的能力>
・楽観性 (“お気楽さ”、Positive mental attitude)
・精神的強靱さ(タフネス、鈍感力?、傷つかない能力)
・肯定的解釈力(ネガティブな事象を自己内に溜めないでよい形に変換する力)
・集中力

 要ります、要ります。
 弁護士費用は、慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)だという説があるくらいで。


<身体的な体力>
(ちょっと違う分野に入るので、詳細は略)と、ちきりんさんは言っているけど、心身の健康はすべての基本です。
 ここは、歳を取るほどに自覚的になり、心身を上機嫌に保つことが必要ですね。

 ちきりんさんは
《これ書いてみて思ったのは、「問題解決能力」という言葉をよく聞くけど、ここに書い
た能力のうち、すごくたくさんをもってないと問題解決なんてできないよね、ということ。》

 といっています。

 弁護士は、法廷における代理人ではなく「問題解決業」ですから、ここに書かれた能力を磨いていくことは、いい仕事をするために必ず必要。

 そのためには、リベラルアーツをきちんと学んで、どんなことも経験してみることが必要ですね。
 ちょっととりとめなくなりました。

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2011年9月12日 (月)

安愚楽弁護団の「説明」に対するいくつもの根源的疑問

 9月1日、「全国安愚楽牧場被害対策弁護団」が無料説明会を開催したそうで、その弁護団説明会の説明内容がWeb上で紹介されています。

 こちらです→http://agurahigai.seesaa.net/article/225326374.html

 ここに書かれた説明が、弁護団の手になるものかどうかは、執筆者名が明らかにされていないので、わかりません。

 その上で、この記事において「弁護団の説明」とされる点については、弁護士の視点からみて、いくつかの疑問があるので、コメントします。
 私のこれまでの下記のエントリー等をお読みになって、弁護団加入の必要なし、と判断された方がおられますので、その方々への責任を果たす趣旨です。

 安愚楽弁護団に加入すべきか http://skondo-life.cocolog-nifty.com/law/2011/08/post-da55.html
 安愚楽弁護団加入問題についてのコメント・ご質問に対する回答 http://skondo-life.cocolog-nifty.com/law/2011/08/post-79aa.html

 以下「弁護団の説明」とされる部分は斜体にします。
 斜体でない部分は、私のコメントです。


 和牛オーナー制度で知られる安愚楽牧場が民事再生法の適用を申請した問題で、紀藤正樹弁護士が団長を務める「全国安愚楽牧場被害対策弁護団」は、無料説明会を開催した。

 説明会の対象者は出資者(和牛オーナーであり今回の債権者)であり、9月1日、場所は東京で開催された。

 その説明会の中で、全国安愚楽牧場被害対策弁護団の団長である紀藤正樹弁護士を含め弁護団より、今回の問題に対して、弁護団結成の目的や弁護申し込みのメリットなどが発表された。

その弁護団説明会の説明内容を簡単に紹介する。

 ここまではよろしいですね。

・安愚楽牧場の申請した民事再生の手続きについて、何年もかけて、再生しお金が戻ると考えるのは、誤解。
・安愚楽牧場の民事再生の申立書には、財産処分による精算が明記させているため結局なくなる。
・つまり、今後は如何に早く出資金を回収するかが重要。

 ここもそのとおりですね。
 誤字脱字だけ指摘しておきます。

 ×精算→○清算
 ×明記させている→○明記されている
 

・今回の民事再生申立は法人である安愚楽牧場のみで行っており、社長及び経営陣代表者は申し立てをしていない。

 これらは事実ですが、民事再生手続というのは、旧経営陣が経営を継続するかたち(DIP型=Debt in Possession = 債務者自身による資産管理型)の再生手続ですので、会社の再生申立と同時に、経営者が再生なり破産なりを申し立てることは、むしろまれです。再生計画を提出して、債権者への弁済の目処がついたところで、経営責任を取る、として破産申立をするケースの方が多いです。

・通常は代表者が連帯保証しているが、金融機関と連帯保証していない。

 ここは、日本語になっていませんが、本件では、代表者が金融機関に対する債務を連帯保証していない、ということをいいたいのでしょうか。

 そんなことあるかなあ。これは事実関係を確認していませんが、未上場の会社について、金融機関が融資をする場合には、代表者の連帯保証を取るのが通常で、本件だけ、特別扱いがあった、ということは考えにくいと思います。
 この点については、追って調査します。


・つまり安愚楽牧場の三ケ尻久美子社長や経営者が自らの資産を明らかにしたくないなどのようなデメリットも想定される。

 これも日本語になっていませんが
 「安愚楽牧場の三ケ尻久美子社長や経営者は、自らの資産を明らかにしたくない意図があって、自らは、破産や民事再生を申し立てておらず、そのために、三ヶ尻社長や経営者の個人資産が明らかにされない、というようなデメリットも想定される。」といいたいのでしょうね。おそらく。

 公平を期するために再度いいますが、上記のとおり、会社の民事再生申立と経営者の破産申立が同時、というのは、むしろまれです。

・よって、不法行為債権として、役員に対しての破産申立をする必要が考えられる。
・債権の透明性を確保し、集まった4200億円の行き先について、徹底的に追求するのが被害対策弁護団の目的のひとつ。
・何もしなければ、安愚楽牧場側が自ら行う閉ざされた民事再生となり安愚楽牧場からしか債権の回収ができない。

 ここには大きな論理の飛躍、混乱があります。

 まず、安愚楽から不当に資産を流出させたのならば、三ヶ尻社長や経営陣に対して、その返還を請求できるのは、安愚楽牧場という法人であって、オーナーの皆さんではありません。

 そして、民事再生法は、一節を設けて、《法人(ここでは安愚楽牧場)から役員に対する責任の追及をする方法》を定めています。以下に抜粋を紹介します。

第3節 法人の役員の責任の追及
第142条(法人の役員の財産に対する保全処分)
裁判所は、法人である再生債務者について再生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、再生債務者の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者(以下この条から第百四十五条までにおいて「役員」という。)の責任に基づく損害賠償請求権につき、役員の財産に対する保全処分をすることができる。(以下略)

第143条(損害賠償請求権の査定の申立て等)
裁判所は、法人である再生債務者について再生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判をすることができる。(以下略)

 以前から指摘していることですが、安愚楽の申立代理人弁護士=安愚楽に雇われて安愚楽の代表者の利益を守るだけの悪徳弁護士、という見方は、あまりにも、民事再生法を知らない皮相な見方です。

 申立代理人弁護士は、安愚楽の代理人であって、三ヶ尻さんたちの代理人ではありませんから、栃木・柳沢弁護士は、三ヶ尻さんたちに対して、損害賠償請求をする必要があれば、当然しなければなりません。

 そして、安愚楽の財産評定(=資産と負債を明らかにする手続)における最大の焦点のひとつは

 「安愚楽の資産が、三ヶ尻氏らに対し、不当に流出していないか、それを損害賠償請求等の手続によって、取り戻すことができるか」

 という点ですから、この点は、監督委員及び裁判所も、きっちり追求するはずです。

 栃木・柳沢両弁護士が、経営陣における不当な資産隠しに荷担したり、黙認するようなことがあれば、弁護士として、懲戒処分をうけるような重要な問題なんです。

・何もしなければ、安愚楽牧場側が自ら行う閉ざされた民事再生となり安愚楽牧場からしか債権の回収ができない。

 というのは、まったく民事再生法を知らない方がいっているとしか思えません。

 上記のとおり、安愚楽という法人は、役員に対する責任追及をすることを法律上義務づけられているといってよく、安愚楽がもたもたしていれば、裁判所が職権を発動し、このような手続を行います。

 このような手続によって、流出した資産が、安愚楽に戻れば、それは弁護団に加入していようと、いまいと、全債権者に平等に分配されます。弁護団に入っていない、と、分け前にあずかれない、ということはありません。

 もうひとつ。
・よって、不法行為債権として、役員に対しての破産申立をする必要が考えられる。

 といっていますけれど、これも非常にミスリードな文章です。
 役員については、破産管財人をつけて、徹底的な財産調査を行う必要があれば、安愚楽という法人は、役員に対して、債権者として破産申立をするはずです。
 ですから弁護団があるから役員の破産あり、なければ、破産なし、というような対応関係にはありません。

・弁護団では、役員ほか個人からもお金を取ることが場合によっては可能になる。

 ここもよくわからないです。
 上では、弁護団の目的は、役員を破産させることあるかのようにいっていますよね。
 しかし、役員が破産すれば、同じ立場にある債権者は、弁護団に入っていようといまいと、平等に保護されます。弁護団に加入しているオーナーだけが、破産債権者として扱われて、それ以外のオーナーは手続に入れてもらえない、ということはありません。
 今回の安愚楽に対する手続と似たようなかたちで「債権届出書」が送付されてきます。
 それを提出すれば、弁護団に入っていようといまいと、同じように扱われます。

・また公的機関への責任追求も場合によっては可能になる。

 これは具体的に何をいいたいのか、よくわかりません。
 公的機関、て何を指しているのか、責任追及って、民事責任か刑事責任か。


・この場合は弁護団を雇った人しかメリットが得られない。

・つまり民事再生についてのみ言えば、何もしなくても債権者全てに配当金は入るが、民事再生以外については別で、集団訴訟をした人のみのこの追加分の配分を得ることができる。

 もうおわかりですね。

 私のコメントを要約します。

 安愚楽から不当に流出した財産は、安愚楽に戻ります。
 その上で、同じ立場にある債権者には平等に分配されます。

 役員の個人責任を追及するにしても、数百億という責任問題は個別交渉で左右されるものとは思えません。
 破産になれば、同じ立場にある債権者は、破産法上同じように保護されます。

 
 こうしてみてくると、とても、上記の説明が弁護士によって要約されたものとは思えません。
 おそらくは、もっと別の説明がなされたのに、要約者が要約しまちがえたのだと思います。
 
 いずれにしても、上記のような要約が一人歩きするのは、よろしくありません。
 弁護団の責任のある地位の方が、きちんと文責を明らかにして「弁護団加入のメリット」を公表されるべきでしょう。

 

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2011年9月11日 (日)

司法修習生に向けて 就職活動に関するTips

就職活動のtips
 かつて、司法研修所の教官をしているときに、クラスの修習生のために述べたことを、アップします。これは、私が、断続的にクラスの修習生のために送ったメールを、ある修習生が、自分の後輩のためにまとめてくださったものです。

 報道では、修習生の皆さんはかなり大変な状況のようですが、一助になれば幸いです。

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

1.自分を認知してもらうための努力

リクルーティングのプロセスは,
(1)複数のメンバーによる事務所訪問を受け付け
(2)事務所側,修習生側,いずれか関心をもったら個別に会う
(3)それで決まることもあれば,何度か面談を繰り返し,採否・諾否を決める
というものです。まあ,一般的ですよね。

 ところが,いつも思うことは,修習生側の「自分を認知してもらおう」という意識の低さです。
採用側は,初対面で複数の修習生に会い,かつ,日を別にして大勢の修習生に会っています。ですから,個々の修習生の印象は,放っておけばきわめて希薄になってしまいます。
それにも関わらず,修習生サイドは,ただやってきて,名刺を出して,こちらの話をおとなしく聴くだけ。
 質問は?ときいても,積極的に発言をしない。
したとしても,判で押したような質問ばかり。

「こちらの事務所では,残業や休暇はどうなっているか」
「いろいろな弁護士に指導を受けるのか,ひとりだけか」
「将来,どのような分野に仕事を広げようとしているか」
「何人くらいまで大きくするつもりか」などなど。

それでも質問すればいい方で,ただ黙って座っている人が大多数。特に男性はそうです。
ただでさえ,男性は数が多いのに,これでは帰ったとたんに顔も何も忘れてしまいます。

そこで,採用側としては,いろいろ工夫するわけです。

「面談シート」みたいなのをつくって,来所してもらったら面談前に記入してもらう。それによって,名刺以上の情報を得よう,話のきっかけをつくろうとする。食事に連れて行ってお酒を飲ませてリラックスさせて,あれこれ話を振って,なんていう「接待」をする。

 正直言って,これは本当に疲れます。まいど,毎度,これが続きます。
上記の次第で「修習生側で,自分を「認知してもらう」ための努力を最大限する」ということを心がけてほしいのです。


2.レジュメの活用

自分を認知してもらうためにはどうすればいいか。
「修習生側で,自分を認知してもらうためのツール」,それは「レジュメ」です。
ここでいうレジュメの意味については以下を参照してください
http://allabout.co.jp/career/careerintl/closeup/CU20040830A/#1

冒頭部分だけ以下に引用しておきます。

(引用開始)
・レジュメとは?
「レジュメ」という言葉になじみのない方もいらっしゃるかと思いますが,日本の履歴書を英訳したもの,ではありません。例えば日本の履歴書に書くような紋切り型の項目はありませんし,フォーマットも基本的には個人にゆだねられています。

それではレジュメとはいったいなんでしょうか?

私が大学在籍時代にキャリアセンターで教わったのは,「レジュメはあなた自身の広告だ」ということです。たった一枚の紙に「あなた」という人間がどのようなことを経験してきて,いかに会社にとって有益か,ということを表現するためのものなのです。したがって,職務経歴書と自己PRをあわせて体裁を整えたものと思っていただいてよいかと思います。

・レジュメを書く前に
レジュメは上記にも書きましたように,あなた自身を売る広告です。まず自分自身の持っているものを棚卸しましょう。この段階では,応募先の企業のことは視野に入れず,とにかくすべてを書き出すことを考えてください。後で記述しますが,この中から相手先の企業にあった項目を選んでレジュメを完成させていくことが重要なのです。主な観点は以下です。

・職務内容
専門技術,専門知識に関わることはすべて書き出しましょう。また,ルーティンワークだけではなく,短期的に関わった仕事などももれなく書き出しておくことが重要です。自分ではたいした仕事ではないと思っていても,人がそう思うかどうかはわかりません。さらに,インターンなどの正規採用以外の経歴も忘れずに!

・自分の貢献
日本の職務経歴書と同様に,自分がこの仕事をやったことで売り上げが○%あがった,コストを○%圧縮した,新規顧客を○人囲い込んだ,などの具体性がポイントです。自分がいかに優秀かというのが端的にわかるようなポイントを探しましょう。

・資格
日本の資格であるならば,どのような資格であるかを説明した簡単な文章も用意しましょう。また,IT系の場合であれば,自分の精通しているハードやソフトの具体的な名称,習熟度なども書き出します。

・PRポイント
自分個人の性格や仕事の取り組み方などに関するウリをまとめます。例えばコミュニケーション能力,プレゼンテーション能力,論理的思考,リーダーシップなど。
(引用終わり)

 事務所訪問は,訪問前から始まっています。
 これから「事務所選び」という人生の大事業をするのですから,提出するかどうかは別にして,これくらいの作業はして,自分の強みと弱みを言語化しておくことは,絶対に必要です。


3.レジュメの書き方

(1)MSワードで作成←手書きでなくていい。一太郎は汎用性に欠ける。
(2)A4 横書き
(3)2枚以内←長すぎると読む気がしなくなる。
(4)写真貼付←映像があるのとないのとでは,認知度合いが全然ちがいます。
   写真も選ぶこと。必要なら写真館で取ってもらうこと。
(5)記載事項について
   自分を売り込むためには,まず,集団の中から自分を「個」として認知してもらわなければ何も始まりません。
   日本人は一般に「個性」を表現することを恥ずかしがります。でも,そのような感性は克服してください。

以下は必須項目です。
・名前 ふりがな
・連絡先(住所 電話 メールアドレス)
  →就職活動用のメールアドレスは真面目なのをつくるべきです。
   oreore(男の例)とかpink-pink(女の例)とかのアドレスで連絡してくる修習生の頭を疑います。
・顔写真(デジカメでワードに貼り付ければよいが,よい写真を選んでください)
・年齢
・学歴(少なくとも高校から,できれば小学校から)
・職歴(バイトかどうかとかは問わない)
・趣味・嗜好

以下はオプションですが書くことを強くおすすめします。
・自分の強み
・他人とちがうところ
・自分の弱み
・1年後,3年後,5年後,10年後どういう法曹になっていたいか
・その他何でも,自分において語るに値すると考えていること

 ここで心がけてほしいことは「大文字のことばで書かない」ということです。
 
 大所高所から論ずるのではなく,あなた自身に密着した,自分の体験に基づく,自分の思いを,自分のことばで書くこと。

 「変革期の社会において,法曹が果たすべき役割」とか,そういう大風呂敷を,修習生がいったところで,実務の荒波にもまれ続けてきた弁護士からみれば「そんな借り物の言葉は聞きたくないよ」ということになってしまいます。

「学生時代,こんな大変な目にあった」「勤務したあの会社では,こんな仕事をして,こんないやな思いをしたが,こうして克服した」という,あなた自身のオリジナルの物語,エピソード,それにもとづく思いを聞きたいのです。

 レジュメはコミュニケーションのきっかけをつくるためのツールです。
 よいコミュニケーションができれば,そこに採用されなくても,どこかに紹介してもらえるかもしれません。
 弁護士になってからも,よい人脈になるかもしれません。
 できれば訪問前に採用担当の弁護士に送付しておきましょう。丁寧なカバーレターを添えて。


4.面談時のこころえ

(1)面談前のこころえ
  面談は,訪問前から始まっています。
  事前にレジュメを送れるなら,送っておくこと。丁寧なカバーレターをつけて(←これだけ手書きにする(署名だけでも),というのはいいかもしれません)。
  当日は,レジュメを少し多めにコピーを持参し,渡せるようにしておきましょう。
  レジュメに関連して質問がきたら,的確に,かつ簡潔に,深く答えられるように準備しておきましょう。
  訪問する事務所の情報が事前に入手できるのならば,下調べをしていきましょう。
  企業法務を中心とする事務所ならば,日経新聞,日経ビジネス(週刊ダイヤモンドでも東洋経済でも、定番の経済雑誌ならよい)を定期購読し,ビジネス書の定番やトピックなものに目を通しておくのは当然です。
  子どもの問題,労働問題,刑事事件,etc,さまざまな書籍が出ています。
  理論書でなく,さまざまな実践の報告,問題提起をしている書籍には目を通しておきましょう。

(2)事務所訪問時のこころえ
 恥ずかしがらずに,どんどん話しましょう。
 最初に話す前には「○○です。」と名乗りましょう。
 謙虚に教えを請いましょう。「質問力」は非常に大事です。
 「そんなことも知らないのか」という反応をされてしまうかもしれません。それはそれでいいのです。
 それをバネに勉強しましょう。

 レジュメと同じですが「大文字のことば」で語るのはやめましょう。
 あなたの体験や,生活実感に基づいた,リアルなことば。
 採用側は,それを聞けるのを待っています。

 個性を出すことによって,はじかれてしまうのではないか,と心配される向きも多いようです。
 偽りのない個性を出すことによってはじかれてしまうのであれば,そのような事務所にはご縁がないのです。
 早めにそのような事務所は就職対象外として,より絞った事務所にアプローチするべきです。

(3)面談後のこころえ
 面談後は,お礼状を書きましょう。
 近藤は個人的には電子メールでいいと思いますが,失礼に思う人もいるらしいので,そこは注意です。

 お礼状の中身も紋切り型ではダメ。とおりいっぺんの時候のあいさつみたいなお礼状なら,だす意味はほとんどありません。
 
 説明を受けた中,話をした中で,もっとも印象的であったことを織り込み,それに対する自分の考えを書きましょう。

 3日以内にお礼状を,もし,再訪問したいならば1週間から3週間以内には再訪のお願いをする。

 訪問を認められなかったから,採用してもらえなかったからといって非礼にならないように。
今回,彼(彼女)はとれなかったけど,誰か弁護士をほしがっている友人がいたら紹介してやろう,と思ってもらえるような,よい関係を作れるように心がけましょう。弁護士になってからも,いつ,どこでお目にかかるかもしれません。

 あなたにとっての理想の事務所は,世の中には存在しません。所詮,他人がつくった事務所ですから。

 もっと,もっといい事務所があるかもしれない,といって決断を先送りにするのはやめましょう。そうして婚期を逃します。

 「まあ,いろいろ問題もあるかもしれないけど,いいとこもある。その事務所を,もっといい事務所にするために自分が貢献できればいいな。」

そのくらいの気持ちでちょうどいいと思います。

 もちろん,ここは自分の感性や考え方とは合わない,というところは,早めに対象からはずすべきです。

 いくらお給料が高くても。初任給の差なんて,皆さんが思っているよりもうんと簡単に埋まってしまいます。

 以上,ご参考まで。

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2011年9月 9日 (金)

大規模法律事務所の悲鳴が聞こえる

 個人ブログとのダブルポストです。

日弁連の発行している弁護士白書2010年版によると、日本の大手法律事務所が抱える弁護士数は以下のとおりである。固有名詞はあえて書きません。

 1位 471人
 2位 338人
 3位 299人
 4位 290人
 5位 224人
 6位 118人
 7位 110人
 9位  73人
 10位 69人

 私自身、かつて、この中に名を連ねる事務所に所属していたことがある。
 この10数年の間に、多くの事務所において離合集散があったので、正確にいえば、それらの離合集散が起こる前のある事務所のことであるが。

 こうした大手の法律事務所は、司法試験合格直後から、若い合格者にアプローチをし、高度の専門性、一等地に立つ個室が完備された美しいオフィス、海外留学などを惹句にして、毎年、数十人単位の採用を続けてきた。

 私が所属しているときから、そういう指向性は垣間見えていた。

 長所は、環境が変わると、一気に短所に変わる。

 誰もが専門家になってしまえば、トータルに全体を見ることができなくなってしまう。
 同じように、大規模な案件が扱えるということは、それらをパーツに分解して処理せざるをえなくなり、若い弁護士が、事件の入り口から出口まで、トータルに関与できる機会を失わせる。
 意思決定に関与する人物が多ければ多いほど、意思決定は遅くなるし、保守的になる。
 規模が大きければ、実行スピードは、遅くなり、コストもかかる。
 個室が完備されていれば、インフォーマルなコミュニケーションが遮断されてしまい、個人の経験の蓄積を交換しずらくなる。
 マネジメントは肥大化し、一部の弁護士は、マネジメントに専念せざるをえなくなるが、えてして、弁護士はマネジメントが苦手だ。

 そんなことを考えて、私は、自分の属する組織のバランスシートを重くしないように心がけてきた。
 
 これらの大手事務所の弁護士の給与は高いので(新人でも1000万円以上がふつう)、人件費だけでも、大変だろう。新人が100人いたら、それだけでも毎月8333万円。当然、シニアの弁護士の報酬はもっと高いはずだから、毎月数億円を調達しなければならないはずである。オフィスの賃貸料も億単位でかかっている可能性もある。

 こうした事務所は、多くの場合、大手企業をその顧客層としているが、長引く不況で、法務予算もどんどん削られる傾向にあるので、本当に大変だと思う。

 給与カットが行われはじめたという話も聞くし、所属弁護士が公益的活動義務としておこなう国選弁護事件の報酬もすべて事務所に入れるようにいわれている、という話もきく。

 なによりも問題は、有能でやる気のある弁護士たちが、仕事もないまま、オフィスで時間をつぶしていなければならないような状況があることである。乾いた砂が水を吸うように知識と経験を吸収できる時期に、生の事件に多く触れることができないのは、本当に気の毒であるし、中長期的には、法曹の質の劣化をまねくだろう。

 だからといって、やめても、簡単に行くところはない。
 新聞報道等にあるとおり、大手以外の法律事務所も、増え続ける弁護士を受け容れかねて、就職が決まらない司法修習生が40%もいるともいう。そんな市場に、飛び出すのはたいへんだ。

 以前、教官をしていた関係で、若い人の相談を受ける機会も多いのだが、本当に心が痛む。

 独り身なら中国へでも留学したらどうかなあ。
 もうアメリカやイギリスを向いていても仕方がないのではないか。
 
 いまなら円高だから、1$=130円時代の半額で留学できるんだから。

 と、すでに職業人生の後半戦に入った私は、夢想したりするが、どうなんだろう。

 全体状況は悪くても、個別にそれを突破する道はあると思う。

 健闘を祈る。

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2011年9月 8日 (木)

債権届出書の記入方法についてのQ&A

 コメント欄にお尋ねがありましたので、お答えします。

《「債権届出書」には、記入するための説明書もついていますので...とありますが、素人でも簡単に記入できる物なのでしょうか? 》

 まずは、説明書をよくお読みになってください。
 法律家の悪癖で文章はわかりにくいかもしれません。
 落ち着いてじっくり読めば、わかると思いますが。


《私は8月にすでに解約届けを送っているので(安愚楽からは受理の返答は届いていませんが)、違約金を引いた額で記入するのか、契約の額で記入するのか...。》

 多い方の金額を記入すればよいと思います。
 安愚楽の方で異議があれば、そういってきます。

《このような疑問点がある場合、弁護団に所属していなかったら、どこへ問い合わせれば良いのでしょうか?》

 申立て代理人事務所の栃木・柳沢事務所か、裁判所ですね。
 これも送られてくる書類をご覧下さい。どこに問い合わせよ、と書いてあるかも知れません。
 あるいは、地元の弁護士会の法律相談にいけば、30分5000円かかるけど、教えてくれると思います。

《担当弁護士さんでもないのに、こんな質問申し訳ありません。教えて頂けたら、今の不安解消にもなります。よろしくお願い致します。》

 ご不安な気持ちはよくわかります。
 でも、まだ起こっていないことを心配するのは、心のエネルギーがもったいないので
 まず来る球(送られてくる書類)を落ち着いて受け止めましょう。
 じっくり読んで、わからなかったら、またコメントください。

 どこまでお手伝いできるかはわかりませんが、可能な範囲でお返事させていただきます。

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2011年9月 7日 (水)

安愚楽牧場 再生手続開始決定に関連して

 安愚楽牧場について、再生手続開始決定がでました。
 決定書は、pdfでアップします。こちらをご覧下さい。

「agura.kaisikettei.pdf」をダウンロード

 コメント欄を通じて、ご質問をいただきました。

【ご質問】
《教えてください。私は自身と家族計100万です。1万円でも返金あるならもうそれで忘れてしまいたいです。こういった場合、弁護士への着手金を払うより、このまま待っていたほうが良いと思いますが、債務者としての登録とか手続きは必要ですか。あるいは出資者である事は確かなので何もしなくても良いのでしょうか。》

【回 答】
そのままお待ちください。
まもなく、裁判所から、再生手続開始開始決定書(このブログにアップしたものと同じ内容)と「債権届出書」というものが送られてきます。
その「債権届出書」には、記入するための説明書もついていますので、それを記入して送れば、それで正式に債務者として登録されます。
これをしないと、権利を失うことがあるので、ご注意ください。

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 あと、開始決定の理由について、若干コメントしておきます。

 理由として

 《証拠によれば、再生債務者は、民事再生法21条1項に該当する事実が認められ、同法25条各号に該当する事実は認められない》とあります。

 裁判所の紋切り型の文章なので、ひらいていうと、こういうことになります。

《安愚楽牧場については、支払停止になるか、その財産でもって全債権者に完済できないことになる可能性があります。そして、安愚楽牧場は、裁判所に対し、法律で定めた予納金も納めたし、この手続以外には、破産手続も特別清算手続きもはじまっていないし、再生計画案はつくれる見込みがあるし、裁判所として、その計画を認可できる見込みがないともいえないし、再生手続の開始の申立が不当な目的のためになされたともいえないし、申立が不誠実なものともいえない。だから、この手続で進めていくことを裁判所として認めます。》

 こういってもわかりにくいか。
 要するに裁判所としては、

《今のところ、安愚楽牧場を破産させるよりも、民事再生手続でやった方がみんなにたくさん弁済ができると思いますよ。まあ、どんな弁済計画を立てるのか、やらせてみましょうよ。》


 といっているわけです。

 安愚楽の経営陣が詐欺をしたとか、しないとか、経営陣の責任がどうだとか、そういうこととについては、何もいっていません。
 ただ、みんなにたくさん配当弁済、配当するのには、いまのところ、再生手続でいいのではないか、といっているだけです。

 以下に参考条文を挙げておきますね。

 民事再生法21条1項
 債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。

第25条(再生手続開始の条件)
次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
一 再生手続の費用の予納がないとき。
二 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
三 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
四 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき

破産法
第15条(破産手続開始の原因) 
債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

第16条(法人の破産手続開始の原因)
債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。

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2011年9月 2日 (金)

『困ったときのネット検索』

Cover

 尊敬する友人と司法研修所教官時代の教え子たちと新しい本を編みました。

 野口体操の師、羽鳥操先生がすばらしい批評を書いてくださったので、ブログから全文引用させていただきます。

 みんな買ってね!

 羽鳥操の日々あれこれ 7月16日より
 
《このブログでもときどき話題にあげている近藤早利弁護士が、他の専門が異なる四名の方々と便利な本を編まれた。

〈住生活、家族、お金と資産形成、悪徳商法、老後の生活、相続と遺言、犯罪と警察、職場、ビジネス、災害〉
 10項目にわたってオススメサイトを紹介する便利な本である。

 実際問題として、困った時に弁護士さんをたずねるには抵抗がある。といって身近に相談に乗ってもられる人は少ない。たとえ乗ってもらっても、適切なアドバイスが受けられなかったり、逆の立場に立った時など適切なアドバイスがあげられないことも多い。
 で、一人で悩むうちに時間ばかりが過ぎていくのが実情だろう。

 そんな時に“検索”、と思い立っても、その中には危ないものも潜んでいるかもしれない。そもそもよく分からないことを検索するのだから、どれを選びどれを選ばないか、その判断を下すことは難しい。

 そんなときこの一冊は便利そうだ。まず、当たりをつけて、“自分の中を整理することが肝要”、と、心得を教えてくれる。

 とても簡潔明瞭・的確なコメントに、サイトのアドレスが載っている。
 Webキュレーター本である。

 このキュレーターの仕事は、検索以上の内容を示すところに命がある。それができるという人は、それぞれの道の専門家であり、且つ仕事としての経験を積んでいることが条件になる。そこに信頼が生まれる。
 キューレターと言えば、美術館などが最初に思い浮かぶ。専門職としてのキューレターに、案内してもらえると美術の楽しみも味わいもより深くなるわけだから。

 ところでこうした新しい本の試みには、相当なご苦労があったことと推察。
 なにしろパラパラとめくるだけで、人間の一生が見えるから面白い。そしていくつかは対処しなければならない出来事に遭遇するのが、社会生活をする者の定めのようだ。これからの私にも知っておきたい項目などが見つかった。》
 
弁護士イチオシ! 困ったときのネット検索 身近な近隣トラブルから予期せぬ自然災害まで。』三省堂 です。

 安愚楽問題を連想させる悪質商法についてのサイトの紹介もあります。

 アマゾンではしばしば品切れになるので、下記に、「困ったネット、送付希望」との件名で、郵便番号、住所、氏名、を記載したDMをいただければ、郵便振替用紙を同封してお送りいたします(送料無料)。

 jimu-kondo@googlegroups.com

PS  電子ブックで出せば、よみながらサイトにジャンプできるのに〜、というご指摘は、ごもっとも。
 まあ、いろいろ事情があるので、それは次の課題ということで。

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2011年8月27日 (土)

安愚楽弁護団加入問題についてのご質問・コメントへの回答

 昨日の私のエントリーに対しても、また、多くのアクセスをいただき、また、数人の方から、反論・コメントご質問をいただきました。

 正直、もう私の過去のエントリーでいいたいことは尽くしているのですが、成り行き上、一回だけ、コメントします。

 いただいたそれらを大きくまとめてしまうと

・ 近藤弁護士は出資に対するリターンのことしか考えていない

・ 集団で訴訟を起こすことが社会を動かす
・ 集団で行動することが、真相解明に役立つ
・ 以上のような目的のためには費用など度外視しても弁護団に入って力を合わせるべきだ

 ということですよね。

 私としては、ぜんぜん異論ありません。
 最初から「民事再生は、債権者に対する金銭分配手続」だから、金銭リターンの観点の話だけをしています。

 社会を動かしたいとか、集団行動で真相を解明したいとか、そうお考えになり、その目的達成のために、弁護団加入が効果的だと思う方は、どうぞ加入なさったらいいと思います。ただし、それはあくまで、自己責任、自己の判断でなさってくださいね、というだけです。

 人は千差万別です。オーナーの方々でも、余裕資金で運用した方もいるでしょう。そんな方の中には「投資は自己判断だ。自分が判断を誤った。そのつけは、自分がかぶる。」という方もいらっしゃると思います。
 あるいは、近い将来、解約して子どもさんの学費にあてようとか、家の購入資金にあてようとしていて、本当に経済的に打撃だが、社会を動かすことや、真相解明より、もう目先の資金ぐりが大変で、あと一銭でも支出は抑えたい、という方もいることでしょう。
 オーナーの数だけの事情があろうと思います。

 ともかくいろいろな方がいらっしゃると思うので、いろいろな方に、多様な意見に接して頂き、参考にしていただければ、と思うのみです。

 「限られた情報しか持っていないくせに、断定するな。黙れ。」という方には

 「いいたいことは、言わせて頂きます。」とお答えします。神でない限り、情報は限られたものですから。いやならご覧になる必要も、私の意見に従っていただく必要もありませんので、ご海容を。

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 あと、東電への賠償請求について、ひとこと申し述べます。

 次のようなツイートがありました。

NLN81 Aug 26, 11:15am via Web
@kondosatoshi> 栃木・柳沢は、東電への賠償請求をやるかどうか明言してません。会社の代理人なので、債権者の代理人としては...との事です。その場合、弁護団が債権者の代理人として賠償請求をすることになります。十分な存在意義では?!#agura

 ここにある《会社の代理人なので、債権者の代理人としては...との事です。》というのが、わかりにくいと思うので、説明しておきます。

 現在のオーナーの皆さんは、その名のとおり「牛の所有者」という立場にあります。
 安愚楽牧場は、牛の所有権を持っていません。

 ですから「契約関係、法律関係を形式的にみれば」放射能の汚染を受けた牛について直接の損害賠償請求をできるのは「オーナーのみなさん」であって、安愚楽牧場ではありません。
 それが《会社の代理人なので、債権者の代理人としては...》という部分の意味だと推測します。

 そして、安愚楽牧場の代理人は、個々の牛の所有権を持たないので「牛の譲受人がみつかったら、牛の代金を払うから、牛を譲渡してくれ」といっているわけです。これが、そして、オーナーの皆さんが、拒否されれば「牛を引き取っていただくしかない」との発言につながるわけです。

 以上の論理を推し進めると、オーナーとして直接、東京電力に損害賠償請求をするというならば、その裏返しとして、牛を引き取らなければならなくなるかもしれません。もちろん、牛を譲渡した上で「譲渡価格が不当に低くなったのは、東京電力のせいだ」ということで、差額を請求するという構成も可能かもしれません。
 しかし、すでに宮崎で口蹄疫の時に1万5000頭、原発事故で福島で数千頭が処分されたとのことですから、オーナーと牛との対応関係は、もはや存在しないような気もしますが。

 ここは法の形式と実質がずれちゃっていて、どう解決するか、申立代理人も監督委員も裁判所も頭を悩ませているところだと思います。

 弁護団加入によって、東電への損害賠償請求をなさる、ということを期待されている方は、以上のような点を理解しておかれるとよいと思います。

CCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCC

 あと、なんで金にもならないのに、こんなことしているんだ、というご質問がありました。
 なりゆきとしか、いいようがありません。
 
 たまたま、あるオーナーの方のご親族からご相談があった。
 私も倒産事件で「なまもの」を扱ったことはありますが、「生き物」をあつかったことはありません。
 これだけの数の利害関係者がおられ、牛、という「生き物」の生死に関わる困難な事件について、申立代理人は、どのように対処されるのかについての、職業人としての知的関心がありました。

 そこで、代理人として債権者説明会に出席し、ご依頼者に対してレポートを書いた。

 その内容は、公の場所で発表されたものであり、さまざまな理由で説明会に出席できなかった方々のご参考にもなると思ったので、若干の改変を施して、ブログにアップし、ツイッターで告知した。
 そうしたところ、多くのアクセスをいただいたので、そのようなきっかけをつくった者として、対応可能な限り、対応した。

 ただ、それだけです。

 こうして書いてきて、自分で気づいたことがありました。
 反発される方もおられると思いますが、とても大切なことだと思うので記しておきます。

 安愚楽牧場=稀代の詐欺師
 栃木・柳澤弁護士=巨悪に荷担する悪徳弁護士たち
 民事再生手続=すべてをうやむやに闇から闇へ葬り去る悪法

 上記の図式はとてもわかりやすく、受け容れたら、すっきりする方もいるのかもしれません。
 このように決めつけて、自分の接する情報については、すべてそのようなバイアスを通して、解釈し、行動する。
 実際、ネット上に流れている安愚楽牧場関係のご発言のかなりの部分が、そのようなバイアスがかかったものであると感じました。もちろん、そう考えるのは自由です。

 しかし、2ついっておきたいことがあります。

 1つは、異論は聞いておいて損はないのではありませんか、ということです。投資するときにも、反対意見、批判的意見に十分に耳を傾けられましたか。

 もうひとつは、上記の図式でものを見るのはご自由ですが、その方たちにも「自分とちがう見方をすることは許さない、意見表明を差し控えよ」という権限は誰にもない、ということです。

 内田樹先生のことばをお借りすれば

《私たちの社会からは「公民」というものが消え失せつつあることについては自覚的でなければならない。「公民」とは、自分と敵対するものを含めて集団を形成することを受け容れる人間のことである》
《「自分と意見を異にする人間はここから出て行け」とすっきり言える人間は、どれほど権威があっても威信が高くとも、財貨や情報を占有していても「公民」とはよばれない。単なる「強い私人」である。》
《「公民」に求められるのは、何よりもまず「他者への寛容」である。自分の好き嫌いを抑制し、当否の判断をいったん棚上げし、とりあえず相手の言い分に耳を傾け、そこに「一理」を見いだし、その「一理」への敬意を忘れないこと。それが「公民への道」の第一歩である。》
《かつて、オルテガ・イ・ガセーは「市民」(civis)の条件を「敵と共に生きる。反対者とともに統治する、とした。この卓見が、もう一度、私たちの社会の常識に登録されなければならない。》

 私が、一週間にわたって、夜寝る時間を削っても、安愚楽牧場に関する文章を綴ってきたのは、こうした考え方に深く共感しており、しかるに、私のブログエントリーに対する、弁護団長からのツイートに、このような考え方に相反する考え方を嗅ぎ取ったからにほかなりません。

 人間の世界に起きる問題に、唯一の正しい答えはありません。
 重要な問いほど、確実な答えはありません。
 あるのは「ただその人にとっての正解」にすぎません。

 皆さんが、多様な意見に寛容に耳を傾けられ、ご自身の頭で考えて判断され、結果についてもご自身で責任を取られますように。

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2011年8月26日 (金)

安愚楽牧場弁護団に加入すべきか

 複数の方から、ツイッターやメールで「安愚楽牧場弁護団に加入すべきか」という質問をいただいています(正確には「安愚楽牧場弁護団に、自分の案件を委任すべきか」というべきでしょうね)。

 私は、弁護団が何を本件の「ゴール」と考えているのか知りませんし、弁護士費用としていくらを請求しておられるのかも知りません。以下は、そのような限定的な情報に基づいて私見を述べるだけです。最終判断は、あくまでご自身のご判断でお願いします。

(1) 破産させるか会社更生手続きに移行させることが、弁護団の考えるゴールなのであれば、私は、そのような「ゴール」を設定すること自体に反対です。その理由は、1日も速く、牛と牧場をスポンサーに引き取ってもらうことが急務で、そのためには、1日のロス(餌代だけで1億円以上)もさせたくないからです。
 したがって、弁護団に加入されることもお勧めしません。

(2) より多くの弁済・配当を得たい、自分だけが損をしたくない、ということなら、弁護団に委任する必要はありません。
 民事再生手続きにおいても、破産、会社更生においても、同じグループの債権者は、平等に扱われます。
 グループの優先順位は、おおざっぱにいうと、
 ①共益費 裁判所が選任した監督委員(破産管財人や更生管財人も同じ)の報酬などの費用
  手続き開始後に発生した債務(たとえば、手続き開始後の人件費、仕入れた餌の代金)
  これが最優先です。
 ②公租公課 税金や社会保険料
  これが第2順位です。
 ③労働債権 従業員のお給料、退職金など。一部、②と同順位です。
 ④一般再生債権 銀行借り入れやオーナーの方々の債権です。

 オーナーの皆さんは、④のグループとして平等に扱われます。
 これは、弁護団に入っていなくても、いても同じです。

(3)経営陣を刑事告訴して、刑務所に送り込みたい
  これが弁護団の考えるゴールなら「やりたい人はどうぞ」と思います。
  ただし、不正については、裁判所の選任した監督委員などもしっかりと調査すると思います。

(4)最新の情報や仲間がほしい
  これも費用に見合うと思うならどうぞ、ということです。
  弁護団加入された被害者の方々に、どのようなタイミングでどのような情報提供がなされているのかは、知りませんので、それ以上のコメントは差し控えます。

 以上の判断に基づいて、私は、自分への相談者には「自分としては弁護団加入のメリットはそれほど大きいとは考えない。しかし、最後はご自身でご判断ください。」と述べています。

 なお、私個人に対する委任についても「委任されたからといって、何か大きなメリットをご提供できるわけではない。」として、正式受任することはせず、費用もいただいていません。

 以上です。

 

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