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2011年8月24日 (水)

安愚楽牧場 債権者説明会 レポート

ご依頼者の代理人として、事務所の野村麻衣子弁護士と、安愚楽牧場の債権者説明会に行ってきました。
 その様子をリポートします。多くは、野村さんのメモによっています(いつも、わかりやすいメモをありがとう!)しかし、文責はすべて、私、近藤にあります。

 配布された資料のpdfも添付します。
 資料の内容は、あまり充実しているとはいえず、以下の多くは、聴き取りメモを元に起こしたものですので、正確性については「それなり」のものだと思って下さい。固有名詞の漢字間違いはご勘弁を。


日時:2011年(平成23年)8月19日 13時 大雨
場所:両国 国技館
 椅子席は少なく、砂かぶりの枡席に一マス4人づつきっちり押し込まれました。待ち時間も含めると、3時間半も窮屈に押し込まれて、これは、債権者集会運営としては、どうかな、って感じです。そもそも腹を立てている債権者に、嵐の中、会場にこさせて、やっと座れたと思ったら、マスですから。何度も足を組み替えているうちに、ふくらはぎが攣りました(>_<)。

出席者:安愚楽牧場 三ヶ尻久美子社長 執行役佐渡氏
    申立代理人 栃木義宏弁護士 柳澤弁護士
    監督委員  渡辺顕弁護士 武井?弁護士 佐藤弁護士
    補助者会計士 久保会計士 井上会計士

式次第 社長のあいさつ 申立代理人の説明 質疑応答

【社長挨拶】
おわび
経緯説明
1979年(S54年) 栃木県那須町に創業 牛1頭からはじめた
1981年 法人成り 全国14支店に
2001年BSE騒動、2002年牛肉偽装騒動などの逆風に耐えて
2009年 株式会社化 直営牧場40 契約農家300
預託法を遵守して運営してきた
しかし
    
2010年 宮崎の口蹄疫で1万5000頭を殺処分
2011年 地震・津波・原発事故→出荷停止
 オーナー(出資者)からの解約相次ぎ資金繰りに窮す
 倒産したら牛を飼育することもできないので、餓死させて衛生管理もできなくなる 前進あるのみ
 そう考えて努力したが、牛肉価格は製造価格の1/3まで下落
 6月末に未払い発生
 7月末に弁護士に相談 民事再生を申し立てた
 個人資産はすべて差し出す覚悟である

【申立代理人 柳澤弁護士から説明】
 
《負債》
  4330億円
  内訳 公租公課 9億4000万円
     金融機関 52億2000万円
     リース  1億1000万円
     その他  59億円
     オーナーへの解約金 4207億円
 
 ★ 第30期の負債 619億円→実際には4330億円 
 このちがいは、オーナーへの返還金をBSに乗せていなかったから(実質簿外)
 オーナーが払ったお金は「出資」ではなく「牛の売買代金」として処理
 解約・満期は、牛を買い戻した「仕入」として処理
 このことにより、これまでの決算書にはオーナーへの債務が現れていない

《収益スキーム》
 出資者は、牛のオーナー(所有権)を取得 契約番号ごと牛の個体あり
 代金は、牛の価格に、飼料代、飼育料などを上乗せして市場価格の10倍
 オーナーには、配当があるし、牛は成長して価格があがり、また、繁殖牛は仔牛を産むので不当ではない(と現段階では思っている)
 
 それなりに運営してきたが

 宮崎口蹄疫で1万5000頭を殺処分、原発事故で福島でも3000頭処分

 解約申し入れが殺到 他方、新規オーナーは獲得できず
 結果

 6月末に 34億円の未払いが発生
 7月15日 22億円 オーナー配当支払い
 しかし、さらに、7月末  60億円のオーナー配当支払いが必要
  
 そこで
 7月24日 執行部会議 弁護士に分析を依頼することに
   25日 申立代理人栃木弁護士に連絡
   26日 栃木弁護士らと面談
   28日 8月1日付の通知を出す
   29日 民事再生を提案され、決意

 申立直前まで、新規オーナー募集の営業活動をしていたのは、倒産回避のための努力で、現時点では、詐欺とはいえないと考えている。

《民事再生手続きを選択した理由》
 破産すると、牛のお世話ができなくなる。餓死させてはダメ。
 牛を生かしておくことが、オーナーの皆様への弁済額を極大化できる方策だと考えた。
 そこで、事業継続できる民事再生を選んだ。
 破産でも事業継続をすることはあるが、あらかじめスポンサーが決まっていないと実際には困難。

《牛の飼育について》
  現在 14万6000頭 うちオーナー所有分が10万9000頭
  一頭につきえさ代だけでも 月1万5000円(月総額21億9000万円!)

  維持するだけでも、資金繰りが大変なので、早期一括売却を目指したい。
  オーナーが所有権を有しているので、売却に同意してもらいたい。
  同意しない人は、牛の現物を引き取ってもらうことにならざるをえない。

《オーナーへの返金について》
 契約ごとに、特定の牛がひもづいているが、あるオーナーの牛が高く売れ、あるオーナーの牛はやすい、というのでは、実質的には不平等になる。
 そこで、全売却代金をプールして、そこから売却経費を控除した残額を、オーナーの出資額に按分して支払いたい。ただし、このような方法が、法的に許されるかどうかは、検討中であり、裁判所や監督委員と協議して進める。
 
 例としていうと、300万円出資した人に、牛の代金30万円が支払われたら、残りの270万円が一般再生債権として扱われる。

《経営責任について》
 時期をみて法的整理をする。
 個人資産は、すべて差し出す覚悟である。
 リース債権については、個人保証しているので、個人資産はまずその引き当てになる。
 それ以外の財産は、会社に提供して弁済原資とする。

《原発事故賠償金について》
 政府の対応が遅れており、具体的額・範囲は不明。
 これからの検討課題。

【質疑応答】
 かなり荒れました。
 感情的な質疑は省略して、意味のありそうなものだけとりあげます。

Q1 牛の維持費は?
A1   飼料代が、一頭につき1万5000円(月21億9000万円?)
   飼育代が月15億

Q2 今は、牛の売り時ではないと思う。
  売却に同意せず、解約しないとどうなるのか?
A2  牛の売却に不同意ということなら、現物をひきとってもらうしかない。
  オーナーさんが委託牧場と直接契約できるかどうかは、なるべくできるようにしたい。

Q3 会社の破綻は、口蹄疫と原発事故のせいのようにいうが、いずれの事象のあとにも、社長はまったく問題ないと言明していたはず。口蹄疫の時は、国からの賠償金が入るといっていたが、それはどうなったのか。代理人ではなく社長が答えよ。
A3 賠償金は入るには、入ったが、予想した時期より遅れたりして・・・・
 (明確に説明できず)

Q4 申立直前に、特定の政治家と宗教団体には支払いをした、との報道?があるが、それはどうか。
A4(社長) 自分は特定の宗教団体には属していない。

Q5 口蹄疫と原発のせいというが、そもそも「出資者=オーナーが特定の牛の権利を取得=牛が付加価値をつけて特定の牛から利益が還元」といううたい文句自体が虚偽ではなかったか。どんどん出資者を募って、後の出資者のお金で、前の出資者に、配当と解約金・満期金を支払うという、ある種の連鎖取引だったのではないか。
 原発事故などなくても、いずれ破綻するはずだったものを、原発のせいにして、事業をたたもうとしているのではないか。
 そこのところの構造をきちんと分析・説明してもらえないと納得できない。

A5 こころがける。

   AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

感想です。
1 安愚楽牧場は破産させるべきか?
  被害者弁護団は、民事再生手続えは、現経営陣が事業に携わるので、手続きが不透明になり、保有資産の食いつぶしが懸念されるなどの理由から、破産手続きによるべきだ、と主張しているようです。
  しかし、本件は、扱っているのが和牛という「生き物」ですから、製造業とちがって、操業を停止する、という選択肢は事実上ありません。
 破産させて、15万頭の和牛を、破産管財人に管理せよ、といったって、それは無理です。そうなった場合にも、専門家の補助者を雇用せざるをえませんが、いきなり、外部からきて、全国にちらばる15万頭の牛を管理できるはずもありません。そうなれば、破産管財人も、現経営陣、従業員を管財人補助者として雇用して、牛を飼育せざるをえないでしょう。それなら、民事再生と同じことです。
 申立代理人の栃木先生は、個人的にも尊敬している胆力も能力もある弁護士です。
 ただでさえやることの多い、申立代理人に余計な手間をかけず、現在の手続きの上で、最善の策を探ってもらうのがよいと考えます。

2 被害者弁護団に加入するべきか?
  上記の理由で「破産させたい」という理由なら賛成しません。
  手続きを遅延させ、資産を目減りさせるだけでメリットはありませんから。
  同じような立場人との連帯がほしい、弁護士の情報分析がほしい、ということなら、着手金に見合うサービスを受けられるかどうか、よく考えて参加してください、ということになります。

3 民事再生手続きで配当は期待できるか。その率は。
  あまり多くを期待するべきではないでしょう。
  直近の決算で安愚楽牧場の有する現預金は63億円しかありません。
  これは相当程度、目減りしているとみるべきでしょう。
  そのほかの資産としては、仕掛品が256億円あります。これは、加工中の和牛だとすれば、実質価値は、限りなくゼロに近いのではないか。
  不動産は、本社、各地の牧場でしょうか。市街地なら銀行担保に入っており、農地なら市場価格はほとんどつきません。
 長期貸付金の76億。これはなんでしょうか。オーナーや役員へのへの貸付、だとすれば、そう多くは回収できないでしょう。

 負債は、再生手続き申立前のものについては、裁判所の保全命令で支払わなくていいので、とりあえず措きます。
 しかし、税金の9億は支払いが必要です。

 一番の問題は、牛の飼料代と飼育代です。毎月20〜30億円かかる。
 申立後の費用は、随時弁済しなければなりません。
 したがって、現在有している現預金が尽きるまでに、安愚楽牧場を(できれば一括で)引き取ってくれるスポンサーがみつからなければ、安愚楽牧場は現預金を使い切って、破産、牛は餓死を免れない、ということになりそうです(契約農家のみなさんは、手弁当でも飼育してくれるかもしれませんが、その牛を、出資者の皆さんが現金化する方法はなさそうです。引き渡してもらうには、それまでの飼育料を支払わなければなりません)。

 こうみてくると、申立代理人の説明どおり、牛を早期に一括売却してもらい、その代金がもらえれば、それ以上は望まない、というのが一番、リアリティのある解決に思えます。

以上

「110819.pdf」をダウンロード

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コメント

教えてください。私は自身と家族計100万です。1万円でも返金あるならもうそれで忘れてしまいたいです。こういった場合、弁護士への着手金を払うより、このまま待っていたほうが良いと思いますが、債務者としての登録とか手続きは必要ですか。あるいは出資者である事は確かなので何もしなくても良いのでしょうか。

投稿: ヘルプ | 2011年9月 7日 (水) 09時40分

こんにちは。

弁護団に入る理由は預託金回収の目的だけでなく、倒産に至った経営責任を追及するため財務諸表、各帳簿類、資産等を第三者機構を通じて公にする目的もあります。
粉飾決算、詐欺容疑、自転車操業様々なグレーゾーンがあります。
簡単に安愚楽牧場の民事再生法が結審されるとは思いがたく、牛を人質にして、逃げきろうとしている感じもあります。

牛は二束三文の市場価格とういう事は知れ渡っていますが、その10倍以上の価格をつけオーナーに売っていたのは法的に合法なのか?もはっきりとしないといけません。
安愚楽牧場は突発的な倒産で説明が不十分なので裁判所での見解が必要となってきます。
要は安愚楽牧場が単なる倒産ではなく、経営そのものに無理、違法性があるかどうか、牛の個体識別標識の2重登録など疑惑があるので民事再生法下では解明されないのです。

投稿: 涙君こんにちは | 2011年9月 1日 (木) 16時17分

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